キュラーズ スティーブ・スポーン|好立地の物件を所有し競合にはできないサービスを追求する
何をやるかと同じぐらい何をやらないかを決断しよう
近年拡大を続けるトランクルーム市場の中で、約20%のシェアを誇り、業界を率いる立場にあるのがキュラーズです。
ひと口にトランクルームといっても、大きく分けて屋外型と屋内型があり、さまざまな業態があります。キュラーズのトランクルームはビル一棟を丸々使用しているのが大きな特徴。各店舗には常駐スタッフがいて、セキュリティや空調面でも安心でき、24時間利用可能です。
そんなキュラーズの代表取締役、スポーン氏に同社の特徴や戦略、起業家へのアドバイスについて創業手帳代表の大久保がお話を聞いてきました。
居住スペースが狭い日本だからこそ生まれるニーズ
大久保:現在は日本に住んでキュラーズの代表取締役を務められていますが、日本に来たきっかけは。
スポーン:キュラーズのCEOという素晴らしい機会をいただいたからです。もともと親が小規模な事業をしていたので、自分にも起業家精神のようなものがありました。
その前に1年間会社に関わってきましたが、CEOという役割は自分にとって初めてだったのでぜひやってみたいと思いましたね。
大久保:キュラーズはどのように創業されたのですか。
スポーン:それまで欧米では広く認知されていたトランクルームのビジネスを日本でも広められないかと、アメリカ人である創業者が会社を立ち上げたのが2001年になります。
大久保:海外だと既にトランクルームは人気があったのですね。
スポーン:そうですね。アメリカ、カナダ、ヨーロッパでも普及しています。
大久保:日本よりも家が広いイメージがあるのに、不思議ですね。
スポーン:日本でトランクルームの需要がある理由は、まさにその居住スペースの狭さにあります。あとクローゼットひと部屋が欲しいというニーズですね。30〜40㎡の部屋に住んでいてプラス2㎡ぐらいのスペースが欲しいという方が多いように思います。
大久保:ユーザーは個人と法人、どちらが多いのですか。
スポーン:80〜90%が個人のお客様ですね。常に家になくても困らない個人の所有物を収納するために使われている方が大半です。
大久保:キュラーズの特徴を教えていただけますか。
スポーン:セキュリティカードをかざすだけで入館が可能で、24時間いつでも自由に荷物の出し入れが可能なので、例えば早朝にゴルフに出発する場合は朝早くにキュラーズに寄ってゴルフクラブを取って行くということができます。
ビル一棟丸ごとトランクルーム専用に設計された店舗でスタッフが常駐していますので、空調などの管理や防犯対策についても安心できますし、現地での契約や申し込みなどの手続きも簡単で便利です。
最近は自宅からキュラーズまで荷物の運搬を行うシャトルサービスも始めました。
常にお客様の立場に立ち、トランクルームを利用する上であったら便利なサービスを考えています。
大久保:どんな使用法が多いのですか。
スポーン:さまざまなタイプのお客様がいます。本やCDなどをはじめとするさまざまなユニークなコレクションや季節外れの洋服、スポーツ用品などを保管されている方が多いです。
引越しや海外転勤のために一時的に使用される方もいますし、ずっと長期で使ってくださる方もいます。
物件を購入し長期で所有しているからこそ可能な質とサービスのクオリティ
大久保:自宅の近くにもキュラーズの店舗があるのですが、他のトランクルームと違って場所がいいですよね。
スポーン:はい。主に都市部の立地がいいビル1棟を購入し、長期で所有しています。不動産投資家としての側面もあるということです。
競合の物件と比較していただくと、ビル1棟なので大きいですし、通り沿いでも目立つのでより多くのお客様にアピールすることができます。また、無料で利用できる駐車場など一般的には競合には難しいだろうと思われるサービスを提供することができます。
大久保:土地の運用なんですね。
スポーン:長期間投資するという前提でクオリティや特徴をキープしています。
長期で物件を所有・運営しているので、それが強みでもあります。創業してから約20年になりますが、20年にわたって利用してくれているお客様もおり、自宅の延長としてお使いいただける安心感も高く評価頂いています。
大久保:日本では人口減少が大きな問題となっていますが、それはリスクではないのでしょうか?
スポーン:確かに日本全体では人口が減少していますが、東京では違います。世界的にみても日本の都市部は成長を続ける希少性の高い場所だと感じています。
しっかりとした建築基準法があり、海外の都市よりも建築や開発がやりやすいですし、資金調達においての利息も比較的低いので、投資という観点から見るとパーフェクトなのではないでしょうか。
トランクルームビジネスは成長産業
大久保:CEOを務める上で、マネジメントではどういうことを意識されていますか。
スポーン:できるだけ現場に出て、現場の社員と一緒にやっていくことを心がけています。細かいところは関わらないというトップの方もいますが、うちは正反対ですね。
現場主義だからこそ意見も出せますし、きちんとした話し合いができます。データも提示し、細かいところまで気を配っているということを社員に見せることも重要だと思っています。
年間プランや戦略をきちんと立てることも重要ですね。会議の前にそういったことをしっかりと用意しておくことで、チームをまとめ、さまざまなことをスムーズに進めることができますから。
大久保:CEOに就任して以来、大変な局面はありましたか。
スポーン:ビジネスとして初期の頃だった、2007年のリーマンショックですかね。その後にコロナ禍も経験したわけですが、こういったことを経験してきてひとついえるのは、トランクルームというビジネスモデルがどんな経済状態下でも成長してきたことです。
コロナ禍では在宅勤務をする人々が増え、家で過ごす時間が増えたことにより外部に物を保管するスペースを求めるニーズが増えました。
コロナ禍が終わり、人々が家を出て外で活動し始めると、今度はスポーツ用品や趣味の道具を保管するスペースが欲しいというニーズが増えたのです。
結果的に経済がどのような状態であっても、トランクルームの需要はあるということが証明されたと感じています。
トランクルーム業界としては、2007年から年に9〜10%ほどの成長を続けています。これからも30年、50年と成長を続ける安定したビジネスだと考えています。
大久保:ビジネスモデルとしては、サブスクリプションと非常に似ていますね。
スポーン:はい。一度使っていただくと、メリットを感じて長期にわたって使っていただくケースが多いので、そういえると思います。日本の都市部の居住スペースは小さいので、何かを収納するというニーズはこれからも変わらずあり続けるでしょう。
例えば、家で自炊するのもいいですが、たまには家の近くのリーズナブルで居心地のいい飲食店で外食することもありますよね。そのお店が行きつけになれば、そこが家の延長のように感じることもあると思います。
トランクルームは居住スペースに物がたくさんある場合に、散らかることやあらゆる制限から解放してくれ、行動にフレキシビリティを与えてくれます。
大久保:スポーンさんもキュラーズを使っていますか。
スポーン:使っていますよ。バイクが好きで、3台あるのでキュラーズにギアやツールを保管しています。(キュラーズ バイクパーキング)
私の住んでいるマンションにはバイクの駐車場がないので、キュラーズがあることで制限から解放され、趣味を追求できているんです。
最近はバイクパーキングを併設した店舗も増えています。
大久保:最後に、読者の方にむけてのメッセージをいただけますか。
スポーン:スタートアップのようなスモールビジネスでは、特に最初の段階ではフォーカスすることの大切さを強調しておきたいですね。
結果を出すためには1つのことに集中することが非常に大事で、あるアイディアをコアにしてそこから気を反らさないようにすること、無駄なことをしないことを意識してください。
「何をするか」と同じぐらい「何をしないか」を決断することが重要です。
低予算でビジネスをスタートされている方も多いと思いますが、投資家を必要とされている方は、ぜひ皆さんがやろうとしていることを信じてくれるパートナーを見つけて欲しいですね。
例えば「1年半でお金を2倍にする」など、自分のビジネスでは難しいと思われる課題を要求されるようならば、相性がいいとは思えません。
皆さんが考え方が同じ投資家を見つけ、同じ目標にむかって進めるよう願っています。
Media source: 株式会社キュラーズ https://sogyotecho.jp/quraz-stephenspohn-interview/